サンティアゴ巡礼道のまとめ

まさか一日に二回羽田空港を使うことになるとは思いませんでしたが、パタゴニアに行ったとき50時間かけて移動したことを思えば楽勝か、と思いシンガポール行きの飛行機に乗りました。むしろ、家庭を守ってくれている妻に感謝の気持ちが尽きません。彼女がいなければレースも仕事も、ましてや育児も成り立たなかったでしょう。大げさな話し合いは持ってはいないのですが、多分多くの家庭がそうであるのと同じように、成り行き上私が働いて、妻が家庭に入っていました。


5/24 - 6/6 の二週間を使って行ってきました。フランスの田舎町、サン・ジャン・ピエ・ド・ポーからスペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラまでの約800km、一番メジャーなルートです。下の地図で赤い線が私の通ったルートです。



9日目頃に足を痛め、途中200kmほど電車を使ったので実際に走ることができたのは約600kmでした。サンティアゴ巡礼道とは、前も書いた通りキリスト教の聖地で、中世からヨーロッパの人々がヤコブの亡骸が発見されたと言われるサンティアゴを訪れるために辿る道なので、一定数の人は文字通り自宅から巡礼を始めます。今回もローマからスタートした人、チューリッヒから始めた人等、数千キロの距離を、数ヶ月という時間をかけて歩いている人に多く出会いました。また、バックパックを次の宿まで配送するサービスや、区間ごとのバスも出ているようでそれぞれの形で巡礼に来る人たちが多くいました。


一つ驚いたのですが、巡礼道を辿っていると逆走している人たちに時折出会います。最初は「逆に辿るのもありなのか」と思っていましたが、どうも彼らは「自宅からスタートして、聖地へ一度到達して戻る途中」だということで、恐るべき距離と時間をかけているのでした。考えてみれば巡礼が始まった頃は電車も飛行機も無い訳で、戻るには来た道を辿るしかありません。


トレイル自体に難しいところは無く、標識も明快で普通に歩く体力と時間さえあれば誰でも歩けるところです。最初の難関であるピレネー山脈でも峠の標高は1400m強、街と街の間は最大でも20kmもありません。ただし、実際経験した体験から話をすると、精神的な疲れが一番の敵かと思います。重厚な作りのロマネスク様式の礼拝堂、レオンやブルゴス等の都市に残る、ステンドグラスのきれいなゴシック様式の大聖堂、日本では鎌倉時代から巡礼者を受け入れてきた歴史のある街、バル等に魅力は尽きませんが、日本語も英語も通じないスペインのど田舎で、一週間も経つと慣れてしまいました。友人や家族と行っていたら、違った楽しみもあるかもしれません。


今回の経費は羽田からパリの往復に約13万円、ヨーロッパ内のパリからバイヨンヌまで、サンティアゴからパリまでで約2万円、ユーロの現金で約10万円を使ったので、合計約25万円でした。基本的にルート上に「アルベルゲ」と呼ばれる巡礼者用の宿があり、予約なし、5−15ユーロ/泊で宿泊ができるので安上がりです(パリではルーブル美術館の至近距離で宿を取り、最後の数日は現地で出会った友人とだいぶ食べ歩いたのでそこだけで数百ユーロ使っています)。