Nasdaqへの上場

私の働いている会社、Markitが米国のNasdaqへ上場を果たしました。ストックオプションとして貰っていた株数はたかが知れているので、株価が倍になろうと紙くずになろうと大した影響は無いのですが、働いているなかでIPOに立ち会うことができたのは嬉しかったです。シンガポールにいる頃から箝口令が敷かれて神経を使いましたが、一般公開となりました。わずか十年で従業員は3,300人を超え、世界中に展開する企業を作った経営陣の力には、驚きを隠せません。


インタビュー記事


子供の頃は、南極点に初めて到達したアムンゼンの伝記等を読んで冒険家になりたいと思っていましたが、現実が見えてくるにつれ「経済的な自由なしに、本当に自由な冒険はあり得ない」と思って仕事を始めました。これだけ世界が狭くなった今、アウトドア関連のアルバイトやガイドをやってでも頑張ればエベレストや南極にまで行くことは不可能ではないと思います。


しかし、スポンサーの有無や意向、食い扶持を気にしながら計画を立てるのは、本来自由な冒険をするためには本末転倒ではないかと思いました。それに、働く必要の無い程の成功を収めた人は、ビジネスの才能と経済力を活かし、非常に面白いことをやっています。例えばヘッジファンドで成功を収め、バイクで世界一周し、さらに車でもう一周した後、シンガポールに住んでいるジム・ロジャース。一代で巨大企業を作り、気球での世界一周等をしているリチャード・ブランソン。彼らの働く動機は生活のためでなく、彼ら自身が広告塔であり、ブランドであり、存在自体が価値を生み出しています。


もう一つ、世の中の仕組みに興味がありました。ブラジルでの小学生時代、なぜ私はガードマンの監視するプール付きのマンションに住み、バスで小学校に通っている一方で同じような年齢の子供たちが住む場所も無く路上にたむろしているのか。父は社会福祉の専門家で、最近は「世の中のためになる仕事をしたい」と人気の分野になっていますが、「だれがその仕組みを支えているのか」という点に興味を持ちました。だれもが非営利組織で働くようになれば、いずれ社会主義に近い形で成り立たなくなるものでしょう。


明確な言葉にならなかったものの、だいたいこんなことを思って働き始めたのを覚えています。何を持って定義するかによりますが、「経済的な自由」という意味では鞄持ちから上場まで6年働いて、ようやく形が見えてきました。むしろ、家族を持って仕事は自分のためだけではなくなっていますし、働かなくてもいい状態が見えてくるとかえって仕事が面白いと感じられるようになり、実績もついてくるものというのは新しい発見です。