パタゴニア・レース1日目

零時のMTBスタート直後アディダスは飛び出し、後を追おうとするもじりじり離されていく。ドイツチームとギアジャンキーがそばにいて前後しながらひたすらダートを漕ぐ。108km。朝6時15分、世が明ける頃パイネ国立公園にあるトランジットに到着。アディダスとの差は訳15分。


着いてきたステファン(以降、敬称略)と一緒にシングルトラックを進み、そのうちトレイルが消えるとヨーキのナビで氷河の取り付きまで向かった。途中、徒渉を一度。がれ場を進み、山を越えるとCP2が見えてきた。この岩肌には化石が見つかり、アンモナイトや貝の化石が至る所にあった。CP2からは南パタゴニア氷河の横断である。CPでチェックをすませ、クランポンをつけて氷河に取り付いた。表面は凍っており、クランポンの爪が引っかかって歩きやすい。初めてでも問題なく氷河上を歩くことができた。このセクションの距離は12kmということで、3時間程度で完了する予定だったが後半どこから氷河を終えるか予想以上に手間取り、4時間ほどかかった。中盤からはアディダスも同じように苦戦しているのが見えた。ちょうど氷河の中程で、映像の撮影をしていたカメラマンのトニーに会う。氷河の上には氷の溶けた透明な川が流れ、所々青い空洞が開いていてとてもきれいだった。終盤氷河を降りる場所に苦労したのは、表面がフラットな氷ではなくクレバスや起立している場面が増えてきたからだった。目視で歩くことのできそうな場面を探し、CP3にたどり着いた。ここから先はトレッキングである。




岩場を歩き出し、薮を漕ぎ出したところで田口が遅れだした。「目の前が薮で、どこを行っていいかからない」ということ。前を行くヨーキ、田中との距離が開き過ぎでレースができる状態ではなかったので、紐を出して牽引を始めた。いったん氷河の脇の山の中腹まで登り、トラバース気味に次のCPを目指す。


ここでも歩きやすいトレイルは全くなく、足の沈む湿地(トゥルバ)や苔の上を歩いていった。CP3までは二カ所、川を渡るためにワイヤーを用いるセクションがあるが、一つ目のワイヤーを見つけるのに苦労した。どうしても地図上あるべき地点に無い。しばらく川沿いを上り下りしているうちに暗くなったが、雨の中ようやく見つけ、ヨーキから渡りだすことができた。田口、山北、田中の順で渡り、対岸でヨーキがハーネスの取り外しを手伝うようにして全員が渡りきった。

この時点で20時間以上行動し続けていたが、メンバーが徐々に睡魔に教われ、前進速度が顕著に落ちたため一泊目のビバークをすることにした。湿地、森の境目を歩いており、雨が強くなっていたため森に入って3人用のテントを張れる場所を探した。1時間半寝るか3時間寝るか話し合いを持ち、3時間休んでコンディションを立て直すことにした。テントに入る直前にレインウェア、シューズを脱ぎ、中で乾いた服に着替えて早々にシュラフに入る。3人用テントに4人が入るととても狭い。