パタゴニア・レース2日目

2時半起床、再び雨の中動き出す。二つの目のワイヤーを張ってある川を目指すが、暗い中のナビは難しい上薮が濃くてなかなか進めない。5kmに2時間半かかり、明るくなる頃到着した。昨日のワイヤーは川が湖に流れ込む場所から少しだけ距離があったので見つけにくかったが、今回は湖のそばだったのですぐに分かった。一人ずつハーネスをつけ、プーリーを使って渡る間に給水をしたり、歯を磨いたりすることができた。渡り終え、次の目的地であるPC4を目指す。足下の緩い湿地帯をひたすら進み、山を越えて歩き続けた。田中はアディダスを引き合いに出してペースアップを要求したが、ヨーキの胃の調子がおかしく食べ物を受け付けないということで消耗しており、荷物は田中と山北が分散して持っていた。

11時頃PC4に到着。ここは氷河湖から川が流れ出ているところで、チェックポイントを通過した後一人ずつカヤックに乗り、対岸に渡るところである。湖には氷山がたくさん浮いており、それらを避けながら40mほどの川を一人ずつ渡った。

主催者の推測ではここをトップチームは昨晩遅くに通過する予測を立てていたが、2位の我々が着いたのは二日目の11時。トップの通過時刻をボランティアに確認したところ、わずか一時間前ということだった。トップチームも想定以上に苦戦しているようである。まずはヨーキがカヤックの手本とラインの取り方を見せ、次に山北、田口、最後に田中の順で渡りきった。ワイヤーを使った徒渉やこのカヤック等、一人ずつ行われるアクティビティの間、ほかのメンバーは食料を補給したり、衣類をかえたりパッキングを行ったり、様々なことができる。男性メンバーは4人が揃った時点ですぐに動き出せるよう認識を持っていたが、田口は慣れておらず4人揃ってから荷物を取り出し、他のメンバーに待ってもらう場面が多くあった。

PC4を通過してからはMt.Blacenda山頂に設置されている無人のPC5を目指す。山頂への取り付きは歩きながら植生を確認できたので、ヨーキのナビ、ルートファインディングで2時間ほどの登りを終え、山頂へ到着した。標高を上げるに従ってがれ場が多くなり、北アルプスの稜線に近い景観が広がっていた。Mt.Blacendaの脇には更に巨大な、氷河をたたえた山がそびえており、山頂は雲に隠れて幻想的な風景だった。パタゴニア地方は標高が数百メートルの山でも森林限界を超えるようでがれ場が多くなり、日本の数千メートル程度の状態に似たような景色が広がっている。また、風が非常に強く停滞するのは危険だった。

PCをチェックした後は東の急斜面を伝って降りてゆき、遥か先にある次のPCを目指した。PC5が山頂に設定されていたためPC6への行程の半分程度を目で確認することができた。本レースへの参戦経験の豊富な田中、ヨーキの二人がどの湿地帯が歩きやすいか、どのルートを組み合わせて進むべきか話し合いながら進み、順調に歩を進めることができた。山北はこの下りで持ち歩いていたBlack Diamondのトレッキングポールを折ってしまった。また、初参加でパタゴニアエクスペディションレースがどのようなレースなのか認識できておらず、「人がかつて歩いたことの無い大自然」、「PCの間隔が二日間」といった言葉に半信半疑だったが、二日目のルートを見て圧倒されていた。

ひたすら雨の中5時間ほど進み、ヨーキが「以前のレースで通った湖畔が歩きやすいはずだ」ということで少しルートを外し、湖畔を歩いた。予想通り湖畔は薮が無く、地面も固く歩きやすかった。同じく常勝チームのアディダスも湖畔のルートをとった足跡が残っており、見渡す限りの大自然で全く同じルートをとることに驚いた。そして湖を抜け、PCが近くなった頃、PCをカヤックで出発するアディダスをついに視界にとらえた。


このセクションは山北がメンバーのクライミング装備を運んでいたので、PC6では装備を減らし、二日分の食料をドロップバッグから出してカヤックに乗り込んだ。ここは2人乗りのカヤックを一艇使い、メンバーを一人ずつ対岸へ運ぶセクションだったので、準備を早く終えた田中が田口、山北、ヨーキの順で運んだ。安全のためスタッフも別のカヤックで同行し、その後2kmほどのトレッキングの後もう一度同じ運搬方法で川を渡った。PC6から二つの川をカヤックで渡る部分は湖沿いにあり、二つ目の川を渡り終えてから湖を離れ、夕方7時半頃トレッキングを開始した。この地方では夜暗くなるのが遅く、10時頃まで明るい中進み続けることができた。朝は6時頃から明るくなっていた。


22時過ぎ、ヨーキが睡魔に教われたため2日目のビバークを決意。早々にテントを張り、3時間睡眠を取った。