パタゴニア・レース4日目

大会4日目。疲れが出てきたのか起床し、出発まで1時間強かかっていた。このロスが後々痛いことになる。テントを出てすぐに深い薮の急登。明るくなる頃登り終えるが、この斜面は夜間通過するのは難しかったのではないか。そして丘陵地帯のトゥルバを抜け、湖畔を通って峠を越えると、トゥルバを10kmほど歩き続けて川を渡り、トレッキングセクションを終える。

峠を越えるときに空が晴れ、この先進むトゥルバ、川とPC7のあるべき場所が見えた。足が沈みなかなか歩きにくいが、3日半ぶりに人の気配のあるセクションへ移れると思うと楽しみだった。川に出て、徒渉ポイントにオレンジのテープが張ってあるということだったがなかなか見つからず手間取った。結局山北が見つけ、ヨーキが最初に渡って深さや流れの強さを確認した。田口が一人で渡るには危険ということだったので田中、山北が脇に抱え、3人で腰ほどの深さの川を渡り、張り出した流木から田口をヨーキが受け取った。

PC7は牧場に設置されており、この先はMTBセクションである。川を渡った地点から1km強で牧場に出るはずだったが、牛の歩くカウトレイルとおおざっぱな地図のために時間を食い、想定したよりかなり遅くPCに到着した。スタッフにチェックしてもらい、MTBを組み立てて次のカヤックに向かう。トランジションの間はカメラが回っており、印象的な場面やチームの状態、他のチームの様子等を聞くことができた。私たちは2位に位置しており、1位のアディダスとの差は6時間。このPCの関門時間は過ぎているが、多くの参加チームが今回のコース設定と関門時間には苦戦しており、もはや関門時間はあってなきに等しいものとなっていた。このトランジションにも1時間半かかり、MTBの後に控えるカヤックのダークゾーンが迫ってくるなかで、テントを干していることに山北は驚いた。MTBセクションは快適で追い風と天候に恵まれ、約2時間でPC8、カヤックのスタートに到着した。PC8は地図の場所から4kmほど離れていたが、ヨーキのナビでほぼロス無く到着した。


大急ぎでトランジションを終えるも、カヤックをスタートできたのは19時半、CP9は目視で確認するだけなので問題なく終えたが、ダークゾーンで停滞が強要される22時までに、24km先のCP10へ到着しなければ行けない。追い風でギリギリ間に合うかどうかというところである。最初斜め後ろから吹いていた風は約半分の地点にある岬を回ったときに強烈な向かい風となり、PC10まで後7kmを残した地点で上陸を余儀なくされた。

暗い中テントを張り、カヤックの装備を整理してさぁ寝るかとしていたところでコースディレクターのステファンが乗ったバンが泊まり、「お疲れさま。みんな苦戦しているようだし、明日も強風でカヤックをスタートできるか分からないからMTBを持ってきた。ここからMTBでPC10に向かい、レースを継続してはどうかな?」と提案を貰う。話を聞くと今日中にカヤックをスタートできたのはトップのアディダスと私たちのイーストウィンドのみで、3位のギアジャンキーはカヤックをスタートできず停滞し、明朝の天気を見て再開を予定。その他のチームもリタイヤと関門の為にラング外となっているということ。私たちが既にカヤックの行程の大半を終えていることと、停滞で十分な睡眠を取れているギアジャンキーとの差を考慮した提案だった。田中はすぐにその提案を承諾、山北と田口も続いたが、ヨーキはカヤックの残り7kmをMTBに換えることに釈然としない様子だった。ヨーキは田中に話し、山北の意見を聞いたが、山北は今回の提案を断る考えはなかった。トランジションに時間がかかるチームで、現にカヤックを10時に終えて1時現在まで片付けやステファンの提案を受けた話し合いを続けており、停滞で十分な睡眠を取ったギアジャンキーと同じようにカヤックをスタートして今後レースを有利に進める確信は無かった。田中はチームとして取るべき選択と、ヨーキの満足のための選択とを分けて考えるべきだと話し、結局ステファンの提案通りMTBを組み立て、カヤックの上陸地点からMTBをスタートすることにして3時間休息を取った。フェアな姿勢を貫くヨーキらしい意見だった。