パタゴニア・レース8日目

4時半起床、6時頃出発を目標にして準備するが、ぐだぐだと6時半前の出発になってしまった。朝起きるとゲイターやシューズに雪が積もっており、足を入れるのを躊躇したのも遅くなった原因である。この日は晴れ、気持ちのいい天気の中進むことができた。両脇には雪の積もった山が見え、トゥルバをつないで時折森の深い沢を抜け、湖畔にあるCP14を目指した。

不安定な路面が続く中で再び田口の足に激痛が走り、30分ほど停滞してマッサージ、テーピングを施した。これらの影響でペースが上がらず、朝立てた計画ではPC14から更に先に進み、トレッキングの最終PC、Mt.Tarnへ向かって10kmほど距離を稼ぐ予定であったが、PC14まで10数キロの段階で明るいうちにPC14に着くことが微妙な状態であることを認識し、精一杯ペースをあげた。PC14の手前の湖では湖畔に小屋が建っており、人が時折利用している気配があった。そして湖沿いにトレイルを発見し、ヨーキと山北が先導して距離を稼ぐことができた。夕闇がすぐそばに迫っていた。


トレイルを終えるとトゥルバに入る。晴れていたのでトゥルバの向こうにある湖のそばにPC14があることは分かっていた。山北が田口を牽引し、荷物を持っていたが路面が安定せず牽引し続けることは難しかった。そして田中の前すねに痛みが走り、ジップタイを足首に巻いて締め付けていた。シンスプリントと言われる障害で、山北も1年ほど前に発症したことがあった。症状や対策、治癒期間等を聞かれたが、目が笑っていなかった。田中はどんなことがあってもゴールまでたどり着くだろう。しかしこの先、よりシビアなルートとタイム管理が求められる中でハンディを背負うのはかなり苦しい。


ギリギリ暗くなる前にPC14に到着。焚き火の暖かさがありがたかった。スタッフの一人が最終PCであるMt.Tarnに登ったことがあるというので、詳しくコースの状況や所要時間を聞いた。私たちは明日中にMt.Turnの山頂を踏み、マゼラン海峡まで折りなければ時間内に完走することは難しい。彼はPC14の手前の湖から山頂まで36時間かかり、山の麓までは歩きやすいが山が近くなるにつれ、薮が濃く、歩きにくいと話していた。我々がここから山頂まで20時間で到着できると思うか訊ねると、「難しいだろうけど、不可能じゃない」ということだった。

ヨーキはここで田中にマッサージとテーピングを施し、各自が焚き火に暖をとった。22時過ぎでここから更に進む心づもりでいたが、極限の疲労を感じる中で暖かい火に当たってい気持ちが緩んでいたこと、一度施したテーピングを別の場所で張り直す手間を考えればここで思い切って休み、明日最後の賭けに出るのが懸命だと判断した。