コスタリカ・レース6日目

悪夢のような下山を終え、流水で足を洗う。意識は朦朧としており、何人で下ってきたのか、メンバーの名前も思い出せなかった。川の音が音楽に聞こえ、川沿いにはあるはずの無い採掘場や車が見えた。下山地点のスタッフに呼び止められ、川沿いを下る正規ルートの他にいいルートがあることを告げられたが、スペイン語だったので雅美さんに会話をお願いした。


その話は川沿いを6km下って次のチェックポイントである徒渉地点に行くか、ここから400m登って山に入り、山の中にある道を通って同じチェックポイントへ向かうかということだった。山のコースは約二時間、おすすめということだったが、私たちも山に入ったものの凄まじい斜面と、道とは呼べない、薮を鉈で払っただけのものに怖じ気づいて当初の予定通り川を行くことにした。最初は順調だった。一部川を渡るところもあったものの、何となくトレイルが開かれているところもあり、時々先住民が入っている気配があった。すぐに3km程度は下れたように思う。しかしそこで、川の両脇が崖に覆われている箇所にぶつかる。川を下ることも、両脇を行くことも絶対に不可能だった。このために、スタッフは山の道を勧めていたのだ。ただしここまでかなりの距離を降りてきたこともあり、崖の上まで薮をこいで進むことにした。メンバー皆、幻聴と幻覚がひどかった。次のチェックポイントまで、約3時間40分。山のルートを行ったカメラマンは1時間半で難なく先回りしていた。約2時間のロス。昨日の夜のナビミスと会わせて5時間のロスである。5時間あれば、ゆっくり眠って回復に努められる時間だ。急遽4人が座り、コミュニケーションを密にすること、レース後半に気持ちを引き締めて取り組むことを話し合った。アディダスはどこかでミスったらしく、私たちのすぐ先を行っているということだった。


この先もしばらく先住民の集落を辿る。21世紀に、電気も道路も通じていない未開の地だ。集落と集落を繋ぐのは、家畜や人の歩くトレイルのみ。斜面に作られたバナナの畑や、家畜を脇に見ながら進む。前後していたエクアドルのチームと、側に生えていたライムを食べると驚くほど味が薄かった。徐々に暗くなるところで、集落の中にあるチェックポイントを見つけ、側で売られていたオレンジを食べる。こちらは美味しかった。水を貰い、午後6時過ぎに再スタート。残り30km弱、もう一つ山を越えて次のトランジションである。頑張って深夜2時頃着けるかどうか。


しかし、やはりレース中盤に入って二日連続の徹夜は厳しかった。強烈に眠かった。自分が誰と歩いているのか分からなかった。眠る以外に根本的な解決方法はないようだったので3時間睡眠を取ることにした。