不動産ブローカーとペルーの債権回収ファンド

最近仕事で最近面白い人たちに会ったので、紹介したいと思います。どの人も半端無く頭が切れて、自分の腕で生活しているというか、世界を切り開いている感じの人です。


まずは一人目、文京区の不動産ブローカー。目白近くに住んでいた頃の通勤路のすぐ側にオフィスがあって、縁があって話を聞いてきました。年は30代半ばなのですが、大学在学中に統計解析を受託する会社を立ち上げ、2億強で事業を売却した後、不動産会社を経営しています。この人が目をつけたのは日本の不動産市場の仕組みで、具体的には低金利で借り入れを起こし、首都圏を中心に不動産を買って買って買いまくるという投資です。鋭い点は3つあって、一つ目は金融商品の価格は当然ながら数字が全てなのでかなりシビアに計算されていますが、不動産はそれに近い性質を持ちながらもやっぱり「この土地だから」、「あの人から買うから」、「相続対策で」等といった要因でばらつきがあること。二つ目は、銀行は担保をつけれる不動産に対する融資には積極的で、大企業が借り入れを起こすのと同じくらいの低い金利で借りることができること。最後の三つ目は、時価の計算が無いということです。正確には無い訳ではないと思いますが、普通のデリバティブ取引などは毎日評価損益が出て、例えば10倍のレバレッジ(1億円を担保に10億円のものを買う)をかけると、10%時価が上がると元手は2倍になりますが、10%逆に動くと丸損で普通8%とかの時点でロスカット(強制決済)、退場となります。


市場の分析には統計解析をしていた頃の知識を使って重回帰分析や標準偏差を出したり、IRRという債券投資に使う収益率の計算をエクセルで行っているということでした。借り入れを起こす銀行を探すのも足を使って、銀行から金融商品を買ってみたり(投資商品を買うと、銀行の管理する顧客リストの中で属性が変わる)、金融機関や担当者によって融資の方針が違うことを利用し、最適なところを探しているそうです。ここまで読んで分かる通り、この人は十億単位で借り入れて資産・負債のバランスは非常に偏っていますが、今のところ問題なく回っているそうです。銀行も数百万の借り入れにはシビアに審査をするようですが、10億借金のある人に更に5000万貸す審査をしてもどうしようもない、というのもあるようです。単純に数百万も数億の審査も、手間は変わらず実収入は桁違いなのは、担当者としては魅力でしょう。


当然ながらリスクは日本の景気(金利の上昇や入居者の動き)と災害で、地震が起きたら即破産ということになります。が、間にこんなブローカーや銀行が入るので、3年で9割以上が退場するといわれる株や為替と比べて成功する人は多いかもしれません。


もう一人はペルーの不良債権をバルクで買って現地でコールセンターと契約を結び、債権回収を行うファンドを立ち上げた人です。同じく30代半ばだと思いますが、4人くらいで事業を始めたばかりのところで会ってきました。日本でもそうですが、銀行が不良債権を抱えると、返済が止まってどうしようもない状況が続くのを一番嫌い、額面の1%程度の価格で債権回収業者に売却します。これは結構信じられないような話なのですが、1000万円借りた人がギャンブルですったか事業に失敗して、その日の生活も大変ということになるとその債務は10万円で業者に渡り、銀行は損金処理を行って次は業者や弁護士等から「あなたの1000万円の借金ですが、30万円、無理なら20万円でいいので頑張って返済しませんか?」という電話がかかってくることになります。「20万円ならなんとか返せます」という話になれば、業者は10万円で買った債権が20万円になったのでハッピー、1000万円借りていた人は20万円だけの返済で済んだのでハッピーという結果に落ち着きます。泣きを見るのは銀行ですが、国に守られているのもあるし、それで回っているのだから時々社会問題になります。もちろん、銀行もバカではないのでこういった不良債権は全部の資産から見れば普通1%もありません。


この人は、南米のペルーで同じような仕組みを作り、軌道に乗せようとしています。普通自分の国でやるか、現地で生活していたりスペイン語が流暢だったりするところから始まると思いますが、この人のすごいのは特段語学が得意な訳でもないのに、複数の国を法律や経済の仕組みから分析し、一番有利と思われるペルーを選んだ、ということでした。数ヶ月に一度、現地に足を運んでメンテナンスするだけでも大変なことです。

 
他にも以前の社長は退職した後イタリアで一年間遊び、シンガポールで高級レストランを作って今では5店舗の経営をしていたり、自分でファンドを作る人もいて何かと面白いです。もちろん、中には失敗して就職活動中の人も。こんな人たちと話して情報交換したりすると、やっぱり何をするにしても勉強は欠かせないというのを強く思います。めちゃめちゃ業界のことや法律、税務のこと等を研究している上、市場原理の働きにくい官僚や公務員の作った制度や税金の仕組みは歪みや穴が多く、知恵のある人ほど賢く使って事業を拡大しています。


というところで久しぶりの更新だったのですが、息子が起きてきたのでまた次回。