ボラティリティの描写②

実際にボラティリティーサーフェイスを描写しようとすると、色々な問題が出てきました。
まずはインプライドボラティリティを計算するにあたってどのオプションプレミアムを使えばいいのかということ。Yahoo! Financeを見ると、Last, Bid/Offer, Change,Volumeが出ていますが、これが最終取引価格、買値/売値、昨日比、出来高としてもどう考えても昨日の変化がおかしかったり、気配値が消えているものもインプライドボラティリティが出ています。


ある時点の価格か、あるいは過去のデータのいずれかから優先順位を付けてピックアップしているのだと思いますが、特に原資産からの乖離の激しいところはどの価格を使うかによって数値が大きくぶれてしまいます。また、満期によってストライクの幅も異なっており、その補完をどうするかという問題もあります。


そこで証券会社のモニターを見てみると、満期別のボラティリティサーフェイスを2次元の画面に落とし込む機能を発見しました。米国株は最短一週間から満期が選べるので、多数のボラティリティスマイルが重なっています。


少し見にくいので、間引いてみるとこうなります。

縦軸にボラティリティ、横軸にストライクの二次元の線グラフに複数の満期を重ねているので分かりにくいですが、奥行きに満期をプロットすると、真ん中がゆるやかな谷底になって向こう側へ下る斜面ができる姿が想像できます。先ほどの最終取引価格、買値/売値を入れると三枚のシーツを重ねたような形になると思うのですが、計算量が膨大になるのと、欠落しているデータも多いので描写は難しそうです。


オプションの何がすごいかというと、普通の株のトレードにおいて損益曲線のデルタは1(100円値上がりすれば100円の儲け)となりますが、オプションの場合は読み間違っても利益を得られるようなトレードができることと、組み合わせを用いて様々な相場観を反映させることができる点に尽きると思います。


例えば現在ハーバライフの株価は30ドル強で、下の表の通り権利行使価格が30ドルのプットオプション(売る権利)の価値は全て「保険」と同義の時間的価値のみになりますが、2016年1月満期のものが10ドルで取引されています。このオプションを売った場合、1年後に株価が20ドルを下回らない限り利益が生まれる取引ということになります。同時にコールオプションも10ドル程度の値がついていたので、両方売る取引をした場合、一年後に株価が20ドルから40ドルの範囲内にとどまっていれば何らかの利益を得ることができます。

とはいえ、この銘柄は色々問題もあって変動幅が大きいので、それを織り込んだ価格ということでしょう。


この時間的価値が満期が近づくにつれ減少すること、3次元のボラティリティサーフェイスを見て歪みがあることに着目し、リスクをヘッジしながら高い確率で利益を生む取引を考えてみました。一つ発見したのは、カレンダースプレッドと呼ばれるものです。下の銘柄(ネットフリックス)のインプライドボラティリティが1月23日より1月30日の方が低くなっているのを見つけ、実際に1月23日満期・ストライクは290ドルのプットオプションを売り、1月30日満期・285ドルのストライクのプットオプションを買う取引を想定します。昨日時点での株価は325ドル前後で、二つのオプションはほぼ同じ価格がついていたので、当初売り買いの差し引きは0。損益はありませんが、時間的価値がゼロとなる満期(この場合1月23日)時点での損益は下記表の通りになります。


図にすると、1月23日時点の株価が極端にぶれていなければ、徐々に時間的価値が顕在化して広い範囲で利益が生まれていることが分かります。


実際に取引しようとすると問題も多いと思いますが、こういったアイディアを出して実戦で使えるように考えることは大好きなので、興味がある方はぜひ連絡いただければと思います。