パンタナル・レース2日目

先ほどの山の頂上に着くまでに零時を超え、二日目に入る。山頂にはアンテナが立っていた。そこからは藪漕ぎで下山。道はない。

(明るくなってくると気分も晴れる)

パンタナルの藪漕ぎはニュージーランドとかその他の土地ほどではないよ、とのレースオーガナイザー・シュビのコメントが事前にあったが、薮は薮だった。そして水がなくなっていたが、ギリギリのところで沢を発見。助かった。

(このセクションではパドルとライフジャケットを持ち運ぶ必要があった。これは地味に手間)


200m程度の高低差で、下山タイムを大幅に見誤っていた。このとき下山にかかった時間は3時間。何れにしても徐々に明るくなっていたのでトランジションではNHKの人がインタビューをしていた。


次はパックラフトを膨らませて出発。しかしすぐ一艇の膨らみがおかしいことに気づき戻る。バルブの締めが緩かった。パンクではなくて良かった。湾を回り込み、水路に入るもポーテージしようとしていたところは軍によって止められているようで手間取ったりして、イマイチ進みが悪い。


そしてハニさんとマチマチが眠気に教われ、悪い流れになりつつあったので活を入れて流れを変え、2艇を繋げて進む。時間はかかったものの水路を抜けてボリビア国境との湖に出ると向かい風が凄かった。苦しい流れだが、進んでいることは分かっていたので漕ぎ続ける。ギアジャンキーとは良く前後していた。岬の突端にあるレファレンスポイントでパックラフトを収納し、見えていた山に登り始める。

(ボリビア・ブラジル国境のマンディオレ湖。後ろに来ているチームはヨガスラッカー、左端に見えている山のピークがCP)


朝の経験から、500mの山と言えど手強そうだった。遠回りの形ななるが尾根沿いの植生が良いとこから登りだす。ただし薮はあった。かなり手足が絡まった。そして蚊も凄かった。マチェットが必携装備なのがよく分かる。これは重くても必携である。ピークを2、3越え、3時間ほどでCPに到着。人がいて、もう一チームに追いついた。丁度彼らも降りるところだったので着いていく。


ちょっと登りからペースが早すぎた。そして手間を省くためライフジャケットも着ていた。そして今回はパドルも手に持っていた。そしてマチマチが倒れた。一緒にいたピークパフォーマンスが去っていく。マチマチにリプレニッシュを飲ませて扇ぐ。結構大変だ。残りの水も少ない。しばらく休んで回復した後、下山道を探す。踏み跡らしきものを追っていくと、先ほどのピークパフォーマンスが「Japanese, here is drinking water!」と飲み水の場所を教えてくれた。助かった。


しかしそこから更に現在地も下山道も分からなくなった。標高は370m、降りるべき場所の高さは140m程度。地図を見ると、多少トラバースしていくと下山道に当たるような形になっている。右往左往するも道が全く分からなくなってしまったので、田中さん先頭に斜面の方角が変わるまでトラバースを続けることにした。23時頃。この夜は2日目の夜だったので寝不足も響いてきていた。トラバースを続けながら斜面の様子を見る。沢は崖のようになっていた。木に掴まり、移動を続ける。


どうしてこんな大変なことをしているのか。途中、多少トレイルっぽいところもあったが見送りそのまま行く。しかし本当に降りるトレイルには当たりそうもない。意を決して沢から下ることにした。私が先頭で下っていった。崖のようなところを降りると、少しずつ標高が落ちてくる。それが励みになった。途中から徐々にスムーズになり、薮をこぐ場面もあったが通路のようになっているところまで降りてきた。そのまましばらく進めそうだった。そしてカメラマンのよっちゃんにあった。それも嬉しかった。


レースは簡単でない。ここから更に6時間かかるとはそのとき誰も思っていなかっただろう。適当な標高まで降りてきてから、場所が分からない。だいたい東に進めば目的とするトレイルが存在し、そこを伝っていくとCPがあるのは分かっていたが薮が濃かった。そして北に進めば湖があり、レファレンスになるということであちこち道を探した。そしていつの間にかここまできた川の道も判らなくなっていた。だんだん焦りも出てきて、田中さんは南北を間違え、私は半ば諦め、蚊にはたかられるし散々な展開になってきた。よっちゃんはしっかりカメラを回していた。


「最悪の夜」というのはコスタリカで標高4000mのチリポ山から下山に一晩かかったときに経験したと思っていたが、あの体験を上回るのがブラジルであるとは思わなかった。それほど絶望的な夜だった。周りは暗く、少し移動するとどこへ向かってきたのか、どこへいたのか判らなくなる。途中からは男三人が方角を決め、道を探しにいくことにした。その際レファレンスポイントがすぐ判らなくなるので、マチマチには待っていてもらった。待つ方も大変である。少し停まれば蚊の大群が押し寄せてくる。レインウェアと防虫ネットである程度防げても、羽音を聞くだけで相当なストレスであることは間違いない。八方ふさがりとなった。情けない。
いかにも出口が見つからないとなったところで、午前4時頃、とにかく道がありそうな東に直進することにする。決めてしまえば時間にして約20分で林道に出た。徐々に明るくなってきた。ここにも蚊が大量にいた。そして歩いていても刺してきた。不快指数がマックスで、早くCPでシャワーを浴びたかった。明るくなり、CPに到着(レースは三日目)。散々な目にあった。冷水シャワーを浴びて服を着替える。田中さんも今回大分やられており、マチマチも相当休まないと体力、気力ともに回復しないことが判っていたので6時間ほど休むことにした。私も休もうとしてマットに転がるが、気が張っていたのかなかなか眠れず、しかも暑かった。さらにここまで蚊もいた。